こんな能力(ちから)なんていらなかった



「ん……」


なんだか、暑い……?


 優羽は寝苦しく感じて、体を反転させる。
 すると、何かにぶつかった。
 無意識のうちにそれに手を伸ばす。

 そこで目が覚めた。


「!?」


 弾かれるようにベッドから起きた優羽は、隣で寝ていた紫音の姿を見て目をパチリとさせる。
 隣の紫音は優羽の動揺には気が付かないままにスースーと、微かな寝息をたてて寝ていた。

 何を思ったのか、優羽は紫音の頬に自分の掌を添わせる。紫音はピクリとも反応しない。今だったら何でもできそうな気がする。
 優羽はゆっくりと顔を近づけた。寝息が頬に当たるくらい近付いた時、優羽はため息を吐いた。


 一体自分は何をしようとしているんだ。

 馬鹿な真似はよせ、と心の中の自分が囁く。


言われなくても、やめますよー


 体を起こし紫音から手を離した。が、引っ張られて、倒れこんだ。


「……?」

「そこまでやっといて辞めちゃうのか?」


 いつの間にか自分の上にいた紫音はそうやって笑った。


起きてたんだ……!!


 さっきの自分の行動に後悔する。

 真っ赤にさせて顔をそっぽ向ける優羽を見て、紫音は楽しそうにしている。


「ど、どいてよ」

「ん?なに?」


 絶対に聞こえている。
 なのに、紫音はこの状況を面白がってる。


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