こんな能力(ちから)なんていらなかった
「いつの間にこんな時間たったの……?」
「優羽の家出てきたのが二時過ぎだったから、そんなものじゃない?」
「え゙!?」
自分が起きたのはそんなにも遅い時間だったのかと、今更ながら驚く。
「ほら、行くよ」
口を開けて間抜けヅラを披露する優羽に紫音は苦笑する。
「う……ん」
恥ずかしくなって慌てて口を閉じる。
なんだか今日はいつもと違う。
二人の間に流れる空気が全体的に甘い。ドギマギするほど。
紫音の手も、行動も、眼差しも、まるで恋人に向けたかのように優しく、甘い。
クリスマス効果かな?なんて一人で思う。
例えそうだとしても、スゴく嬉しい。
「て……え?ここ?」
「そう」
「うそん……」
「本気」
車から降りた優羽の視界いっぱいに映ったのは船。それも、映画に出てくるようなでっかい船。
世に言う豪華客船なるものでは……?
それにぞくぞくと人が乗り込んでいく。誰もがドレスアップしている。