こんな能力(ちから)なんていらなかった
優羽は溜息をつきながら千秋を鞘に収める。
「ありがとうね」
千秋は鍔鳴りで返事をする。
優羽はそれを聞いて満足そうに笑うと横を向いた。
紫音も優羽の方を見ている。
「紫音は見鬼だったんだ?」
「らしいな」
自分のことなのに他人事のように返す紫音に優羽は笑う。
見鬼(けんき)っていうのは、優羽のような人間を指す。要するに霊感がある人だ。
たまにいるが、紫音のようにここまではっきり見えてるらしい人はそういない。
「家系?」
「いや、家族で俺だけ」
見鬼の大体は遺伝、その家系の血が関係している。優羽はそうだが、紫音は突然変異らしい。これも珍しい。
「千歳優羽の仕事も知ってるの?」
「大方は」
大体読めてきた。
「貴方と私は仕事を通じて知り合ったわけだ?」
「それに近い感じ」
「かなり親密な関係だったの?」
「それなりに」
自分のことをどこまで知っているのか、それによって自分について聞ける範囲は限られている。