こんな能力(ちから)なんていらなかった



 優羽は溜息をつきながら千秋を鞘に収める。


「ありがとうね」


 千秋は鍔鳴りで返事をする。
 優羽はそれを聞いて満足そうに笑うと横を向いた。

 紫音も優羽の方を見ている。


「紫音は見鬼だったんだ?」

「らしいな」


 自分のことなのに他人事のように返す紫音に優羽は笑う。

 見鬼(けんき)っていうのは、優羽のような人間を指す。要するに霊感がある人だ。
 たまにいるが、紫音のようにここまではっきり見えてるらしい人はそういない。


「家系?」

「いや、家族で俺だけ」


 見鬼の大体は遺伝、その家系の血が関係している。優羽はそうだが、紫音は突然変異らしい。これも珍しい。


「千歳優羽の仕事も知ってるの?」

「大方は」


 大体読めてきた。


「貴方と私は仕事を通じて知り合ったわけだ?」

「それに近い感じ」

「かなり親密な関係だったの?」

「それなりに」


 自分のことをどこまで知っているのか、それによって自分について聞ける範囲は限られている。


< 38 / 368 >

この作品をシェア

pagetop