こんな能力(ちから)なんていらなかった
何故かは分からない。
気が付いた瞬間からそうだった。
もしかすると、世の人間全員が全員そうなのかも知れない。
だが、比較する対象が優羽にはいなかった。
それに——
例え嫌だとは感じても、ここまで激しい感情を思う人は多くはないように思う。
優羽は視線を振り切るように早足で廊下を歩くと、階段を駆け下りていった。
ショートホームルームが終わってすぐに出てきたからか昇降口付近には人の気配が無かった。
今日はさっさと帰ろう。
それで奈々とお菓子でも作ろう。
そう決心しながら校門を通り抜けた時、嫌な気配が漂うことに気が付く。
顔をあげて探ってみればここから近い。
「予定変更、か」
ひとりごちるとその気配の感じる方角目指して歩き出した。
間が悪いことに気配を感じた方角はオフィスビルの建ち並ぶ駅近く。こんな時間帯でも人が多いのは容易に想像つく。
案の定、駅前のスクランブル交差点には沢山の人がいた。信号が変わるのを皆が待っている。
その中に漂うドス黒い靄に優羽は視線定めた。