こんな能力(ちから)なんていらなかった
「いいから! 紫音も早く学校行きなよ!」
照れ隠しに大声で強めに言う。
それに対して紫音は余裕綽々だ。
「意地張らない方がいいと思うけど?」
笑顔で指摘されてゔっと喉が詰まる。
これは見透かされてる。
「どうせ、まだ方向音痴なんだろ?」
……やっぱり。
「悪霊の気配感じる方に行くのは構わないけど、決まって帰って来れないんだよな、お前は」
紫音は笑いながら話す。
「あの頃はまだ今程携帯発達してなかったからさ、その度に俺が迎えに行って」
「私ってアホだったんだ……」
「今だって変わらないじゃん。 身一つで出てきてるところを見るに」
何おう!?と態度で表しても紫音に上手く流されてしまう。
「ほら、もう着くよ」
言われて顔をあげれば確かに自分の高校のフェンスが見えた。
ほんの少し歩いただけで着いたということは大分大回りをしていたらしい。
「優羽だけだったら絶対この数倍はかかってたな」
「五月蝿いっ!」
優羽は握られていた手を振りほどこうと腕を振るが、離れる気配がない。
諦めて大人しくなるといい子と頭を撫でられた。明らかに馬鹿にされている。