こんな能力(ちから)なんていらなかった
私みたいな女にあんないい男がキスしてくるわけない!
それが、額だとしても、してくるなんてあり得ない!
つーか、そもそも、あれは現実だった!?
——………………。
暫し考える。
チーン。
結論→あれは夢
優羽の演算装置は余りの事態に上手く対処しきれずに間違った答えを導き出す。
しかし、それにツッコんでくれる人が誰もいない。そのために、それを間違いと認識することが出来なかった。
優羽はそのまま熱に浮かされた自分が見た夢として、忘れよう、そう思い布団を被った。
一時間後——
先生に起こされた優羽は寝る前に考えていたことが頭からすっぽり抜け落ちており。
要するに——
「熱は下がってみたいね?」
「なんかわからないんですけど、頭大分スッキリしました」
熱を測るために額に手を添えられながら優羽は笑顔で先生に答える。
——キスのことを本気で忘れていた。
「ならよかった。 丁度休み時間だから教室戻んなさい」
「はーい」
保健室のドアの前で失礼しましたと言い残し出て行く優羽の顔に悩み事の影など一つもなかった。