こんな能力(ちから)なんていらなかった
***
pipipipipipipi……
小煩い枕元の目覚ましをべちんと叩く。
沈黙する目覚ましを尻目に優羽は大きなあくびをかます。
時間が経つのは早いもので、もう日曜日の朝だ。
いつもと同じように朝六時に起床した優羽は手探りでズボンを探す。やっと見つけたそれを引きよせベッドの中でモゾモゾと時間をかけて履く。そうしてやっとベッドから降りるのが優羽のデフォルトだ。
そして優羽はベッドの横に立ち尽くすと顎に手をやり悩み出す。
「何を履くか……」
いつもであれば今から外に走りに行くのでジャージを選択するところだが、今日はそうもいかない。
何故って、今日は紫音との約束がある日だから。
なのでパンツスタイルでいくかスカート履いていくかで悩み中だ。
初めてとはいえ……気合入れすぎとは思われたくないからなぁ。
数分考え抜いた後、細身のスキニーを選び、履いた後キッチンへと向かう。
その途中で和室の縁側で寝転がっている奈々を見つけた。
「おはよ。 奈々」
「みゃあ♪」
顔を上げた奈々は可愛く鳴くとすぐに日向ぼっこへと戻った。
今日は流(お母さん)がいない日だから、このまま一日をここで過ごすのだろう。