こんな能力(ちから)なんていらなかった


 とニュースキャスターが真面目な顔へと変わる。優羽はあ……と小さな声をあげる。
 こうゆう時は大体嫌な事件があった時だ。

 案の定。


『昨夜十時頃、埼玉県の某市で爆発事件が起こりました』


 読み上げられるニュースに優羽の顔は険しくなる。


『二名の死者が出たこの事件を警察は連続爆弾魔の仕業と断定、事件の究明を——』


 優羽は最後に残っていたご飯を掻き込むと席を立つ。

 茶碗を洗うためだ。お母さんがいない時ぐらいは自分のことは自分でするようにしている。でないと家事が何も出来ないおんなになってしまう。それだけは避けたい。

 洗う合間に考えるのは先程のニュースのこと。

 ここ半年程何者かによる同じような死傷事故が発生している。もう既に十七件、死傷者は三十名を超える。

 この事件に大きな特徴は二つ。
 一つは爆発事件にも関わらず、爆弾の破片が見つからないこと。
 そして、もう一つ、半径三メートル程にしか及ばない小規模な爆発に関わらず、毎回必ず死傷者が出ること。
 ただし、発生現場や時間帯、狙われる人に共通点はない。

 北は北海道、南は九州まで起きている事件で、いつどこで誰が狙われるか分からない。だが、手口は同じ。だからこそ警察は同一犯の快楽殺人と四ヶ月前に断定した。しかし事件解決の糸口は見つからない。何せ爆弾のない爆破事件だ。不審者の目撃例もいなけりゃ、手掛かりの一つもない。使えない共通点しかないため、防御策を講ずることもできやしない。
 しかし、不満は出るわ出るわで、警察へのバッシングも日々増えていく一方だ。


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