こんな能力(ちから)なんていらなかった
眩しい笑顔を直視出来ず優羽は目の前に手をやる。
「どこ行くか……って何やってんの?」
「いや、ちょっと」
笑い声混じりの紫音に苦笑で返す。
あなたが、眩しくてなんて言えるはずもない。
は?と言われて終わるのがオチだ。
「とりあえず……移動しない?」
「そうだな」
話を変えようと提案したのだが、紫音もそれに賛成してくれてよかった。
「どっか希望はある?」
「特には……」
ないと言いかけたところで先程のことを思い出す。
そう、先程の紫音に向けられていた視線の数々を——
「……やっぱ、人目に触れなくて二人きりになれる場所がいい」
優羽は歩き出そうとしていた紫音の袖を掴みながら言う。
紫音はそんな優羽を一瞬目を見開いて食い入るように見つめた後、顔を押さえて溜息をついた。
「どうかした?」
何か間違えたことでも言ったかと不安になるが、紫音はすぐに通常状態に戻った。
「こっちだ」
紫音は言うなり優羽の手を取り歩き出す。
後ろを必死についていく優羽にどうしたのかなんて尋ねられるわけなかった。
紫音の後ろに着いていくこと数分。
紫音は唐突に立ち止まり手を離した。