こんな能力(ちから)なんていらなかった



「……他には?」

「何が?」


 そう言って振り返った紫音ににじり寄る。


「優羽の話。もっとあるでしょ?今日はそれを聞きにきたんだから」

「……そういや、そうだったな」


 優羽は真っ直ぐに紫音の顔を見つめる。


「まず……何から聞く?」

「出会った時から全部」


 んー、と少しだけ唸った紫音。
 そしてゆっくりと語り出した。


「優羽はさ、俺と同じ学校にいたのはもう気付いてるよな?」

「まぁ……」


 なんとなくではあったけれどそんな気はしてた。

 まさか自分が華桜院にいたとはなかなか信じられなかったが、今ので確信へと変わる。


「で、優羽は俺と同じクラス。だけど最初に話したのは……五月後半くらいだったか……」

「そんなに?」


遅かったの?


 優羽は微かに驚きの表情を浮かべた。


「でも、なんで……」

「それは優羽が原因」


 ほらこれと紫音は携帯を差し出してくる。

 そこに写っていたのは——


「昔の携帯だったから画質は悪いけど、分かるだろ?」


 とんでもないものだった。


「……これ、私?」

「正真正銘優羽だよ」


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