こんな能力(ちから)なんていらなかった
画面の中にいたのは真っ黒な髪をゆるく縛った女の子。いい感じにふわふわに編み込めてはいるのだが。
問題は分厚い前髪と黒縁の眼鏡だった。
とにかくそれがその子を暗くしてしまっている。
表情もよく見えない。
「…………確かにこれは近付きにくいわぁ」
「因みに小難しい本を黙々と読むのがデフォだから」
「それは……話しかけるのに勇気がいただろうね……」
紫音は曖昧に笑う。
「てかよくこれと私が同一人物だって分かったね?」
こんなに顔を隠されては、全然分からないと思う。
優羽の髪は今は短く、肩に届かない程度の長さで、しかも眼鏡はかけていない。
たったそれだけでもかなり印象は変わるはずだ。
それなのに、何故紫音は私が千歳優羽だと断定できたのか。
答えは思ったより簡単だった。
「次の写真見てみろよ」
紫音はひょいと携帯を取り上げるとポチポチと操作して「きっと驚くよ?」と優羽の手に戻す。
怪訝な顔をしたまま、それを見た優羽は。
「……は」
目を丸くしてその画面を食い入るように見つめた。
「……整形?」
思わず呟いたその言葉に紫音はゴホッと噴き出した。
「なんでそうなるんだ!?」
「……だって、こんなのあり得ないでしょ」