こんな能力(ちから)なんていらなかった



 それが本当に分からなかった。


「自分の姿は有名だからって言ってた。なるべく肌を露出するなって言われて育ったらしい。じゃないと妖が来ちゃって大変だからって」

「……なるほど、この子も祓屋か……どこの家の子だろ?」


 自分も知っている家かと記憶の中を浚う。
 しかし、ここまでの美少女を自分は知らなかった。


「て何?その顔は」

「忘れたのか?これが誰か」


 だからそれを思い出そうとしてるんでしょ。


 優羽はこめかみに指をあてぐりぐりとそこを押す。が、一向にその顔が出てくる気配はない。


「だめだー!分かんない!!」


 面影らしきものは見つけたけどそれが誰かは分からない。


「……これ優羽なんだけど」

「…………は?」


 とんでもないことを言い出した紫音の顔を凝視する。
 その顔はとても面白そうで、その余裕が憎らしい。


「何言ってんの?こんな可愛い子のどこが私なの?」

「自分で自分のこと可愛いとか美少女とか……事情知らないとすっごい自信家にしか見えない」


 紫音は堪えきれないというように腹を抱えて丸くなる。その肩がすごい勢いで揺れている。


「笑いすぎ!」

「………………ムリ」


 何が無理だと言うのか。


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