こんな能力(ちから)なんていらなかった
「というかさぁ、これ私なわけないじゃん。もしこれが私だと仮定するなら私今頃彼氏なしなんて状況になってないよ」
自分の顔は特別ブサイクってわけでも見れないって訳でもないと思うけど、こんなに可愛くない。
何ていうか平凡?中の上?中途半端?
「あ、自分で中の上とか言えちゃうんだ?」
「……すいません。本当は中の下です」
「ふーん」
なにその返事。自分で振っておいて、なにその興味ないって感じのそれは。
「可愛くない顔しててすいませんね!」
プイと横を向く。
——私だってあんな美少女の顔に生まれたかったよ!
優羽は完全に臍を曲げて拗ねてしまった。
足を組んでその膝の上に頬杖ついて、はぁーと盛大な溜息を漏らす。
紫音があんな表情してるなんて気付かずに。
「やっぱ、優羽は前と変わらないな」
「……は?」
こんなに(主に顔が)変わってんじゃん!
優羽は振り向いて噛みつこうとしたが、予想外の紫音との距離に言葉を失う。
優羽の顔に落とす影は紫音の身体、それほど近くに紫音はいた。
優羽に覆いかぶさるようにして近付いた紫音は及び腰の優羽の顎を捉える。