こんな能力(ちから)なんていらなかった
仕事の時に嫌でも実感せざるを得ない。
「他にって言っても、俺お前と話したのたったの二ヶ月なんだよ」
「短っ」
衝撃のカミングアウトに優羽は目を見張る。
一学期にも満たないなんて、余りにも短すぎる。
その短さの理由に優羽はまたも驚く。
「一年の夏休み入る直前に突然連絡取れなくなって、しかもそのタイミングで引っ越したって聞いてさ。何処に行ったか動向はさっぱり見当つかなくてそれっきりってわけです」
「それは……」
お手上げと言うように肩を竦めた紫音に優羽は言葉に詰まる。
「ドンマイと言いますか……まぁ、なんか……すまん?」
謝る必要性は感じられなかったけれど、謝らないよりかは謝った方がいい気がしてそう述べる。
紫音は左の眉をあげた後。
「謝る必要はないんじゃない?」
そう言う。
「だよね?」
優羽はホッと息をつく。
「どちらかって言うと優羽が記憶喪失のになった理由を聞きたいんだけど?」
紫音は優羽をチラリと見る。
気のせいだとは思うけど、その顔に必死さが垣間見えたもんだから。
「事故にあったの」
ポロと答えてしまった。
親に口止めされてたのも忘れて。