こんな能力(ちから)なんていらなかった
「事故って……」
「あ。」
気付いた時には既に遅かった。
「ごめん、これオフレコで……」
「……なんで?」
「…………私も知らないんだよね」
なんでと言われても私に分からないものは分からない。
「ただ目覚めたら管が沢山ついててさぁ、なんか全身痛いし、何でこうなったか覚えてない……っていうかその日より前のこと知らないし。親って名乗られた人に事故にあったの言っちゃダメて言われたら頷くしかなかったんだよね」
そう。
何故か事故にあったってことは言ってはいけないと言われた。
聞こうとしてもはぐらかされ、自力で調べようにもそんなデータは出てこなかった。
過去の自分はどこにもデータとして残っていなかったのだ。
徹底されすぎていて不審だったけど、真実を知る方法が無ければ、どうしようもない。
行き詰まった後はもうやけだ。
いつか思い出す。そんな軽い気持ちで気付けば三年が経っていた。
「事故、か。傷は残ってないのか?」
「全然、今じゃ事故にあったのも分からないくらい……」
「そうか」
よかったと安心される。
「なんでそんなこと聞くの?」
紫音ははぁ?と変な声を上げる。