こんな能力(ちから)なんていらなかった
紫音の指から解放された優羽は押しつぶされていた頬をさする。紫音の顔は完全に面白がってるのが見て取れる。
「紫音ばっかモテてずるい。私なんか告白されたことないのに……」
優羽は口を尖らせ横を向く。
どうせ澄まし顔で言うんでしょ。「当たり前だろ?」とかって。
が、現実の紫音は想像していたものと全然違った。
「え、そっち?」
「……それ以外になんかあるの?」
「……イエ」
……なんか態度が可笑しい?
優羽は「そっち?」と聞いた紫音の反応に違和感を感じながらもその違和感の正体を突き止めることが出来なかった。
首を捻りながらメニューを手に取る。
「……紫音はまた珈琲?」
ペラペラとそれを捲っていくと紫音は小さく声をあげた。
「え、何……?」
「俺これがいい」
紫音が指差したところをどれどれと見た優羽は、一瞬の間を開けて紫音の顔をまじまじと見る。
「これ、本気?」
「俺甘党だから」
紫音はしれっとしているが、指差しているパフェはかなり大きい。普通のパフェの二倍はあるようなブツだ。