こんな能力(ちから)なんていらなかった
「……何を?」
「翼——」
「は?」
そう、彼らは翼を持っているのだ。
まるで、天使であるかのように。
そして彼らは不思議な能力を使って人間に攻撃を行う。
彼らはそれを罪とは思わない。絶対に。
自分達を人間より崇高なものだと信じているからだ。
だから平気で人間を殺す。
紫音は本気なのか?と問う。
「本当だよ。何度もこの目で見た」
自分の目を指す。
それでも紫音は目を丸くしたままだった。
「まぁ、見鬼だとしても信じられないよね……天使なんて」
優羽はそこで漸く紅茶に手をつけた。
無言の紫音に少し不安を感じて目だけで見る。
「っ!」
紫音の眉間に刻まれた深い皺に息を飲む。
「紫音……?」
眉をひそめて紫音の名前を呼ぶ。
紫音は深く何かを考えているようで顎に手をあて机をジッと見ていた。本当に机を見ているのかどうかすら分からない。
もう一度名前を呼ぼうとした時不意に紫音は顔を上げた。
「優羽、約束しろ」
「……うん?」
「これからそのangelicが現れたら必ず俺のこと呼べ」
「は!?」