こんな能力(ちから)なんていらなかった
考えずとも答えは決まっている。
絶対にNOだ。
一般人である紫音をこんなことに巻き込むなんて許されない。爺様にそんなことを知られれば、間違いなく雷は避けられない事態となることだろう。
というか怒られる怒られない以前に、自分の防御すら出来ない紫音では寧ろ邪魔、足手まといになりうる。
だというのに——
「返事は?」
「はいいぃぃぃぃ!」
気迫に負けて承諾してしまった自分はとんでもない馬鹿だ。
だが、後悔なんて出来るわけがない。
だって、何度あの場面に立ち戻ったとしても頷いてしまっていただろうから。
それだけ紫音の顔は怖かった。
代わりと言ってはなんだが。
事件よ起きるな——
とその日の夜から毎日願った。
その甲斐あってのことだろうか。
必死に空に懇願したその日からangelicの目撃情報はおろか、爆発事件ですらも、はたと途絶えたのだった。