こんな能力(ちから)なんていらなかった


 優羽はハァハァと荒い呼吸の合間に、文句を絞り出す。


「大体連絡が急すぎるんだよ……」

「突然暇になったもんだから」


 なんだその突然って奴は。
 振り回されるこっちの身にもなってくれ。


「最近気付いた……」

「何を?」

「結構強引だし、全て自分の手の上っていうか……?」


 何が言いたいのか分からないって顔される。
 自分でもよく分かってないんだから仕方ない。


なんだっけ……。
こういう人。

よく、題名とかになってる……あ!


「紫音は“俺様”だ!」


 紫音はキョトンとした後あははと笑った。


「今更?」

「否定しないんか……」


 最初紳士とか思ってた自分の目は節穴だってことなのだろうか。

 何度か深呼吸すると呼吸が落ち着いてきた。


「……で、どこ行くの?」

「どこ行きたい?」


 ニッコリ笑顔で言われる。
 これが俺様なのだと気が付いた今、この笑顔はただの笑顔ではないだと分かる。


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