こんな能力(ちから)なんていらなかった
「要は……決めてないんだね?」
「正解。で、どこ行きたい?」
なにこの行き当たりばったり感。
でも——
「遊園地」
「了解」
——嫌いじゃない。
優羽は紫音の後についてさっき出てきたばかりの改札を通る。
「ここからだと○楽園が近いか……?」
「方向性は提案したからおまかせで!」
紫音はじゃあとスタスタ歩き出す。
その後をたかたかとついていく。
しばしした後やってきた電車は、日曜の昼間らしく。
「ゲロ混み……」
乗るのを躊躇うほど混んでいた。
「いいから乗るぞ」
「え、わっぷ」
ぐいと引っ張られすし詰め状態の中に放り込まれる。
「……!」
たまたま近くになった人が香水臭くて鼻を塞ぐ。
と電車が大きく揺れた。
吊革に捕まってなかった優羽は体制を崩して、他の人に倒れこみそうになった。
が、それをぐいっと引っ張りあげたのは紫音の腕だった。
「掴まっとけって」
「ありがと……」