こんな能力(ちから)なんていらなかった
誘導された先にあった棒に掴まる。
紫音は吊革に捕まりながらももう片方の腕は優羽の背中を支えている。
今迄華奢だとばかり思っていたけれど、引っ張りあげた時はかなり力強かった。
やっぱり男なんだ……。
綺麗な顔をしているからたまに疑うが、こういう時に感じるギャップにドキドキが止まらない。
「降りるぞ」
差し出された手に捕まろうか一瞬躊躇するも、また倒れるのはやだよね。と考え、素直にその手を取る。
「あの人かっこよくない!?」
周りから聞こえてきた声にビクッとして手を離そうとしたが、一瞬早く握られてしまい、逃げられなかった。
「もう降りれたし、いいよ……」
「何が?」
紫音に握られた手を軽く振る。
「これ」
「お前目離すとすぐ消えるから。今日はずっとこれで」
「なっ……!?」
赤くなった優羽を楽しそうに見下ろすと紫音は歩き出す。
「ほらもう着くぞ」
言われてずっと下を見ていた顔を上げた。
そして、目を見開く。
「ジェットコースター乗りたい!!」
「言うと思った」