こんな能力(ちから)なんていらなかった
紫音は言うとそのまま園内に入る。
「チケットは!?」
「大丈夫」
自信満々なので、それ以上は何も言わずについていく。
園内は子連れやらカップルやら友達同士やらでかなり混み合っていた。そして、そうなると心配になるのは隣の男のこと。
——絶対に逆ナンされるに決まってる!
現に周りの女豹は既に紫音のことをターゲットと定めたようだった。
じりじりと迫ってきている。
私が守らなければ……。
そう思ったことが間違いだったと後で思う。
「なぁ優羽——」
「紫音のことは私が守る!」
「……は?」
優羽はしまったと口を押さえるも恥ずかしさで顔が赤くなっていく。
紫音はそんな優羽を見て吹き出した。
「そうか、守ってくれるのか」
「うるさいっ!」
紫音は肩を震わせ笑い続ける。
いたたまれなかった優羽は苦し紛れにジェットコースターの方へと引っ張った。
——ジェットコースターは園内の混み合いに反比例して列が短かった。
「……なんでだろ?」
「これだからじゃない?」