こんな能力(ちから)なんていらなかった
紫音の指差したそこにはポスター。
東京タワーの鉄橋をジェットコースターが滑り降りて(?)いた。
キャッチコピーは“この角度を想像してください”。
「ほぼ垂直?」
「だな」
紫音はぐいっと優羽の腕を引っ張る。
「もう順番だ」
「はやっ!?」
言われた通り、もう前には人がいなかった。
しかもこの流れだと——
「一番前!?」
「確実にな」
紫音も頷く。
「怖いのか?」
「全然!すっごい楽しみ!」
そうゆうやつだよな、お前は。
そう言って紫音は優羽の頭を撫でた。
しかし、優羽は興奮しすぎてそれに気がついていなかった。
「チケットを拝見させていただきます」
「はい」
そう言ってカードのようなものを係員に差し出す紫音。
係員の人は笑顔でそれを紫音に返すとこちらにどうぞと案内された。
みんなが乗り込み安全バーの確認をした後動き出したコースター。
「そういや、さっきのなんだったの?年間パス?」
「みたいなやつ。使ったの初めてだったけど」