こんな能力(ちから)なんていらなかった
それ年間パスの意味あんの?
そう思った時に頂上に来る。
これから訪れるスリルにワクワクしながら下を見る。
——人間がゴミのようだ!
……なんてね。
某大佐の真似をしていた時、紫音が優羽の手を握った。
「へ?」
言った瞬間、ガクンとなるコースター。
そこからは全てがあっという間だった。
落ちて、横に捻られ反対に捻られ、一回転して。
きゃーきゃー言って手を上げていたため、握っていたその手が誰のものかすっかり忘れていた。
「で、どうだった?」
「もっかい乗りたい!」
「余裕すぎんだろ」
テンション高い優羽を紫音はクスクス笑う。
「でも、その前に——あれなんかどう?」
紫音が指したのはスピニングコースター。
それに乗る人達はみんなグルングルンガックンガックン回ってる。
スリル感は少なめだが、楽しそうだ。
「……いいね」
「じゃあ行くか」
その時の優羽の頭からは、誰と手を繋いでいるかなんてすっかり抜け落ちていた。