こんな能力(ちから)なんていらなかった




***




「めっちゃ楽しかったーー!」

「それはよかった」


 適当な喫茶店に入った二人は向かい合わせで笑い合う。


「で、持ってきてくれた?」


 伸ばされた紫音の手をまじまじと見つめた後、自分の手をぽすと乗せてみた。


「…………」

「お、怒んないで!ちゃんと持ってきてるから!」


 鞄を漁った後優羽は机の上に茶色い封筒を置いた。


「大変だったんだかんね!データベースにハッキングして、それプリントしてさ」

「お前機械類は強いのか……」


 紫音がその封を開けて中から取り出したのは、沢山の人間の顔写真と、そのプロフィール。


「これで全部?」

「全部」



 実は昼間届いたメールには続きがあったのだ。

 『あと確保したangelicのデータ全部持ってこい』と言ったように。
 そして『忘れたら、覚悟しとけよ』という脅しも。
 それが紫音は俺様と思い当たった所以だった。


 紫音はそれに真剣な表情で目を通して行く。数分でそれらの紙を茶封筒に戻した。


「で、何が知りたかったの?」

「知り合いがいないかどうか」

「は!?」



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