こんな能力(ちから)なんていらなかった
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「めっちゃ楽しかったーー!」
「それはよかった」
適当な喫茶店に入った二人は向かい合わせで笑い合う。
「で、持ってきてくれた?」
伸ばされた紫音の手をまじまじと見つめた後、自分の手をぽすと乗せてみた。
「…………」
「お、怒んないで!ちゃんと持ってきてるから!」
鞄を漁った後優羽は机の上に茶色い封筒を置いた。
「大変だったんだかんね!データベースにハッキングして、それプリントしてさ」
「お前機械類は強いのか……」
紫音がその封を開けて中から取り出したのは、沢山の人間の顔写真と、そのプロフィール。
「これで全部?」
「全部」
実は昼間届いたメールには続きがあったのだ。
『あと確保したangelicのデータ全部持ってこい』と言ったように。
そして『忘れたら、覚悟しとけよ』という脅しも。
それが紫音は俺様と思い当たった所以だった。
紫音はそれに真剣な表情で目を通して行く。数分でそれらの紙を茶封筒に戻した。
「で、何が知りたかったの?」
「知り合いがいないかどうか」
「は!?」