こんな能力(ちから)なんていらなかった




「まだ傷にすらなってないうちで」


 笑う優羽には、それが嘘だってことぐらい分かってた。



傷になってない?


馬鹿じゃないの。


もうとっくのとうに瀕死の重傷ですけど。


——手遅れって言われるくらいにはね。




***




 あの日以来ちょくちょく来るようになったメール。
 内容は他愛もないことばかりだけれど、嬉しかった。


 だけど、紫音のことを思い出すたびに思い出してしまう。


——紫音の想い人。


 彼女はどんな人なんだろう。

可愛い?
綺麗?
優しい?
我儘?


——私と似てる?


 考えても無駄だってことは知ってる。

 けれど考えずにはいられない。


どれぐらいの頻度でデートするの?
どんなメールするの?
どんな話をするの?

紫音は彼女にどんな顔を向けるの?




「——あ!」


 駅前で偶然紫音の姿を見かける。
 と勝手に走り出してしまう自分の足。


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