こんな能力(ちから)なんていらなかった
「ん〜……あれ?」
優羽は伸びをした時隣に誰かいることに気が付いた。
「……流?てことは私」
「——街中で倒れたんだとよ」
流が目を開ける。
「おはよう」
「おはよ」
流は眠そうに欠伸をする。
「ごめんね……私のせいで」
「気にすんなっていつも言ってんだろ?」
でも、と言い募る優羽の頭を乱暴に流は撫でる。
「ちょっと!」
「気にした罰だ」
「もーー!!」
優羽は怒ったような声を上げるが、内心では流の目の下にできた隈を気にしていた。
また、迷惑かけちゃった——
流は笑顔で部屋から出て行った後、自己嫌悪に陥る。
——怖い夢を見た時、
それと黒髪の女の人を見た時に私はパニックに陥る。
そうなったら最後、流に抱きしめられないと落ち着くことはない。
何故流じゃないと駄目なのかは分からない。
黒髪の男だからかなと思ったが、父親では駄目だった。
東京に来る時も流が着いてきてくれたのはこのためだった。