『友人狩り』
「なぁ、先生は？」

郁哉は後ろの席に座っている男子に聞いたが、その男子は「まだ来てねぇよ」と答えただけだった。

「変じゃねぇ？」

航平が郁哉に聞く。

「俺もそう思う。」

郁哉は航平にそう言うと、通路を挟んだ隣の席に座っている雫を見た。
雫はどうやらさっき優李から来たメールに返事を送っているため、携帯をいじっていた。

しばらくすると、さっきの女性と5人の男性がバスに乗ってきた。
男性1人は運転席に座り、後の男性4人は後ろの席に座った。

「おはようございます。」

よく響く声で女性が話し始めた。
それと同時にバスが発進した。

「3年B組の引率をさせていただきます。南麗華と申します。後ろにいる男性と運転をしている男性は今回、私のサポートをしてくれる人たちです。」

女性はよく響く声で淡々と話していった。

女性の声はよく響きキレイだと思うが、何故か心には響く感じがしなかった。
そう、決められた言葉をアナウンサーのように淡々と話している感じだった。

「目的地まで、しばらく時間が―」

女性が話している途中、郁哉が手を挙げた。

「何かな？」

女性は郁哉に目を向けると聞いた。

「何で先生はいないんですか？」

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