『友人狩り』
10分後、各自の班で代表の携帯電話以外は5人の男性が没収をしていった。

「では、最後にこれだけ伝えておきます。」

南麗華は生徒たちを見渡しながら言った。

「ゲーム中、何をしても構わないように国王様から命じられています。そして、この森にはいくつもの監視カメラが備え付けられています。森だけではなく、コテージにも監視カメラは付いておりすが、お風呂場やトイレにはありませんのでご心配しないで下さい。このゲームで皆さんの絆が本物なのかを国王様に見せて下さい。それでは、今日はここでゆっくり休んでください。明日の朝、各自班で別々のところに移動をしていただき、ゲームを開始します。」

南麗華は不敵な笑みを見せると、扉の外に出ていった。
残った5人の男性は代わり代わりに扉の外からダンボール箱を数箱抱えて入ってきた。
そのダンボール箱の中には弁当とお茶が入っていて、1人ずつ生徒に男性が配っていった。
生徒たちに配り終えると、次は生徒の分だけの布団を運び、充電器も持ってきた。

「今から食事をしてもらい、その後は自由だ。何をしても構わんが、ここから出ることはできない。シャワーもトイレもあちらのドアの向こうにある。」

男性の1人が大きい声でしゃべった。
その男性は南麗華とは違って、生徒たちを見下したような感じでしゃべり、奥のドアを指差した。
そして、

「今の時間は、7時だ。明日に備えてできるだけ疲れをとっておいたほうがいいぞ。」

と言い、出ていった。
その後を残りの男性たちが続く。

男性たちがいなくなった後も重苦しい空気が漂っていた。

「雫。」

雫が俯いていると、いつの間にか隣に航平が座っていて、雫の膝の上に弁当を置いた。
顔を上げて航平を見ると、航平は弁当を黙々と食べていた。
反対の隣では郁哉も黙々と食べていた。

「食えよ。」

郁哉がご飯を口に運びながら言う。

「これは夢じゃない。現実に起こっていることだ。今、お前がすることは飯を食べること。それだけだ。」

郁哉の言葉を聞いた周りの生徒たちは次々と弁当の蓋を開けていった。
喉に詰まらせながらも、少しずつ口に運んでいく。
郁哉の言葉には不思議な力があって、皆を納得させる力がある。
だから、クラス代表をしていて、皆からの信頼も厚い。
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