『友人狩り』
雫も哲郎も黙ったままだった。

郁哉は雫を横目で見るとポケットから携帯を取り出した。

「携帯もここでは時計の役目だけか…。」

哲郎が郁哉の携帯を見ながらポツッと呟いた。

さわさわ。

風が呑気に3人を包んでいった。


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あれは、雫が中学に入って間もない頃だった。

「雫…。」

放課後の帰り道、小学校からの親友と帰っているときに親友が深刻そうに雫の名前を呼んだ。

「…??」

いつもは騒がしく大声ではしゃいでいる親友が、今は俯き言いにくそうにしている。

「どうしたの??」

雫は不思議そうに親友に聞いた。
すると、親友はゆっくりと顔を上げて雫に聞いた。

「雫は…堂島君のこと好きなの??」

「へっ?郁哉??」

親友の口から郁哉の名前が出てきたことに驚いた。

「…郁哉は友達だよ。ただの幼なじみ。」

その言葉に雫でもわかるほど親友は顔を笑顔に変えていった。

「もしかして…郁哉のこと好きなの??」

雫は思ったことを親友に聞くと、親友は恥ずかしそうに頷いた。
それには雫が驚いた。
親友はどちらかっていうと、積極的で初対面の人でも普通に話せる人見知りのしない性格だ。
しかし、何故か郁哉の前だと大人しくなる。
雫は、てっきり親友は郁哉のことを苦手としていると思っていたが、どうやら逆だったらしい。
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