『友人狩り』
「ただいま。」

雫は玄関で靴を脱ぐとリビングに顔を出して、夕食を作っている母に声をかけた。

「お帰り。」

雫の顔を見て、ニッコリ笑う母に弁当箱を渡して冷蔵庫から麦茶を出した。

「雫…。」

母は弁当箱の中身を見て、小さい声で雫の名前を言った。

「何?」

雫はコップに麦茶を注ぎながら、わざと明るい声で聞いた。

「…もうすぐしたらご飯できるから着替えてきなさい。」

母は雫に何か言おうとしたが、それを飲み込み違うことを言った。

「うん。」

雫はリビングを出て、自分の部屋に入り、ベットにうつ伏せに寝転んだ。
母が言いたかったことはわかっている。
4月の半ばから弁当を残し始めていたのに今日は綺麗に食べていた。
不思議に思うに違いない。
雫はゴロンと寝返り仰向けになって、壁にかけているカレンダーを眺めた。
5月11日のところに雫の字で“遠足”と書かれていた。

「行きたくない…。」

雫は枕を顔の上に乗せて呟いた。

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