『友人狩り』
第2章。
郁哉はすっかり日が落ちた空を眺めた。

＜また始まった…＞

昼休み弁当を半分以上残していた雫の顔が浮かんだ。

＜アイツのあの弱さ…どうにかならねぇかな…＞

そう考えていると、ポケットの中で携帯が震えだした。
携帯の画面を見ると久しぶりの文字が表示されていたが、郁哉は驚かなかった。
そろそろかかってくるだろうなぁとは予測していたからだ。

「はい。」

『あっ、郁哉君。ごめんなさいね、突然電話なんかして…。』

電話の相手は申し訳なさそうな声で話してきた。

「いいよ。そろそろ電話来るかなって思ってたから。あと、ご馳走様。」

郁哉は思っていたことをそのまま言うと、電話の向こうでクスッと笑う声が寂しく伝わってきた。

『やっぱり、郁哉君が食べてくれたのね。おかしいと思ったのよ。最近、残していたのに今日は綺麗に食べているから…。』

郁哉に電話をかけてきたのは雫の母だった。

『原因は、優李ちゃん？』

雫の母は、少し言いにくそうに郁哉に聞いた。

「多分…。」

郁哉は足元に転がっている石ころを蹴飛ばして言った。

「おばちゃん、心配しなくても大丈夫だよ。今は、まだ日にちがあまり経ってないから寂しいって思っているだけで、アイツはあの頃のアイツとは違う。」

郁哉はそう願いながら雫の母に言った。

『…ありがとう。』

雫の母はそう言い、『ごめんなさいね。部活で疲れているのに電話なんかして…。』とまた謝った。

「いいよ。」

それだけ言うと、郁哉は雫の母と電話を終わらせた。

郁哉はポケットに携帯を戻そうとしたが、その動きを中断して再び携帯の画面を開いた。
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