深海魚の夢~もし、君が生きていたなら~
「運命が違った、って事ですかね」
「…あ、ユラさん」
相変わらず素敵な立ち振舞いで目の前に現れた彼に、一瞬見惚れる。
流石はナンバーワンの貫禄。
「…実はな、今、いくつか"ある計画"が持ち上がってんだ、Re:tireの事で」
な、と目で合図するように含みのある笑みを浮かべるカナタとユラさん。
なになに、と身を乗り出して聞くと、カナタは自分の携帯を取り出して、画面をコツコツと爪先で叩いた。
そこには、メールのやり取りの履歴表示。
ハル『俺、りたいあのドラムやりますp(´ω`q)』
思わず、えっ、と声を出して驚いてしまった。
面白い展開だろ、とジュリが勝ち誇ったように言う。
「なんの偶然か知んねぇけど、ソラの奴、ドラム叩けるっていうんだよ。だからスカウトした」
「ソラくん高校生だよ!?」
「あいつ、高校卒業したら働く予定だからバンドもやれますって言ってたし、やる気満々だから大丈夫」
この前、お前に内緒で会って話したんだ、と飄々と言って除ける様子に同意するように頷いたユラさんが放った台詞に、また驚愕した。
「それで、今日から僕がRe:tireのボーカルになって」
「俺がカナタの代わりにギター弾くから」
新生Re:tireの誕生だ、と乾杯している二人を横目に呆気に取られる。
そして。
「ハル、お前スタッフな。今日からRe:tireのマネージャー」
「は!?…え、意味わかんないし!」
「お前ほどRe:tireを大事に思ってくれる奴、いねぇから」
極力俺とズッキーが中心になってやるから、時間が空いてる時にサポートを頼みたい。
──お前しかいないんだ。
真剣な顔でジュリに詰め寄られた。