深海魚の夢~もし、君が生きていたなら~
Time-4.終わりと始まり
新生Re:tireの第一回目の打ち合わせは、新宿から少し離れた某駅前のファミレスで行われている。
どうせやるなら派手にしようぜ、というズッキーの提案には全員が賛同して、今後の予定を決めていく。
ズッキーは今度のライブで配る無料CDの製作をする為にHeavenを休職していて、ソラくんは学業の合間を縫ってひたすらドラムの練習。
ジュリとユラさんはホストクラブへの出勤を多少減らしながら音楽製作の時間に充て、Re:tireを広めていくという事になった。
「俺、日本一のギタリストになるつもりだから」
「僕も日本一のボーカル目指すから、もう店でジュースしか飲まない事にしたんだ」
…正直、Heavenのナンバーワンとナンバーツーがこんなに音楽への情熱が激しい人達だとは思わなかった。
ホストクラブの意外に忠義に厚い後輩達の協力もあり、Re:tireのチケットも順調に売れている。
どうにかして動員を稼ぎたい。
次回のライブは正式にカナタがRe:tireから脱退する日でもあり、新生Re:tireをお披露目する日でもある。
「ドラム間に合いそうかよ?」
「…頑張ってるっす」
「ソラくん、どこで練習してんの?」
「軽音部のドラム借りて、学校でやってまふ」
家にドラムあるけどじーちゃんとばーちゃんがいて叩けねーから、なんてパスタを頬張りながら言う彼。
今までのRe:tireのドラムは他のバンドから人を借りてサポートをしてもらっていたけれど、これからはソラくんが専属。
四人体制になって、ジュリもズッキーも嬉しそうだ。
「ねー、あの人達格好よくない?」
「すごっ…芸能人かな?」
「バンドじゃない?ヴィジュアル系の」
周りの女子高生達が目の前の華やかな男達を見て噂をしている。
派手な髪の色も宛らに、歌舞伎町のトップクラスの迫力は伊達ではない。