逆ハーレムに巻き込まれました。




ゆるゆるとそちらを振り向けば、そこに立っていたのは心配そうな顔をしたシェイド君。



「セリナお姉さん……今日も来たの?」


「うん、まぁね。報告したい事もあったし」



私はそう言いながら、彼のためにベッド横のスペースを開けた。


シェイド君は補助魔法科の生徒のため、治癒魔法上達のためにもこうして病院で働いていたりする。


これも、一つの経験なのだそうだ。



「うーん、脈拍も呼吸も正常なんだよねぇ……」



シェイド君はそう言いながら、手に持っていたバインダーにサラサラと何かを書き込んでいく。


そのまましばらく経った頃、彼はふと思い出したように顔をあげた。



「そういえば、アレン先輩について話があるから知り合いがいたら捕まえてこいって担当の人に言われてるんだけど、二人ともちょと言いながら、いい?」



何気ない様子で言われたその一言に、私はビクリと肩を揺らした。


頭の中をよぎるのは、嫌な考えばかり。



(もし、委員長に後遺症が残るとかいう話だったら……。私のせいで、今後の委員長の人生を台無しにしてしまったら……!)



心の中がヒヤリと冷えて、咄嗟に動けなくなる。


どくり、と心臓が嫌な音を立てた。


手の平に汗が浮かぶのを感じながら、私がシェイド君へ返事をしようと思ったその時……



「なら、俺様が行く」



そう言ったのは、クリュウだった。


彼は私の頭を2、3回優しく叩くと、そのまま背を向けて歩き出す。


その時、心の中に聞こえてきたのは――思いのほか優しい声。



『無理すんな』




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