逆ハーレムに巻き込まれました。
村人はまず、白く綺麗な布でセリナのための衣装を調えた。
さらに、村の中心に小奇麗な家を造り、その中に祭壇を作ってセリナに座らせたのだ。
――そう。村人が思いついたのは、セリナの神聖視。
セリナを『巫女』として崇め、その加護を――負の感情を消してもらおうと――村へやってきた人から、お布施と称して多額の金を取ろうと考えたのだ。
そこで何の効果もなければ『詐欺だ』と言われて終わりだったのだろうが、幸か不幸かセリナの力は本物だった。
結果、セリナの元を訪れる人は日に日に増えていった。
――そんな中、中心人物であるセリナは何も知らされていなかった。
知らないまま、慕っている村のみんながお願いするままに、その力を使った。
自分の力が、みんなの役に立っている。
そう思うだけで嬉しくて、『負』の感情を吸うたびに重くなっていく身体のことなんて気にも留めなかった。
――その日々が崩れたのは、セリナが神聖視され始めてから一年ほど経った頃。
村から離れた場所にある大きな町に、セリナの村の噂が流れたのだ。
ただし、『人々の感情を抜き出す恐ろしい吸血鬼が、村の人々を操って自分を崇めさせ、エサである人間を集めているらしい』という内容で。
……セリナが『負』の感情を取り除く時に血をもらっていた事から、生まれてしまった噂だった。