逆ハーレムに巻き込まれました。
吸血鬼といえば、人に害をなす魔獣の中でも恐ろしい部類だとされている。
容姿は人と変わらず、知恵もあるため、人間のフリをしていてもおかしくない、と言われ続けてきた種族でもあった。
だから、その話を聞いた領主は、その噂が間違っているかもしれないなどと疑う事はしなかった。
疑わないまま、領主は冒険者ギルドへと調査及び討伐の依頼を出した。
……何も知らない村人がその話聞いたのは、クエストを受けた冒険者が村へやって来る前日。
しかも、持ち帰られた情報は『吸血鬼が村の人々を操っている』という不完全なモノだった。
それを聞いた村の人々は、その噂を――信じた。
自分たちが考え、自分たちが起こした行動であるにも関わらず……
その責任を全てセリナに押し付け、あたかも自分たちは被害者であるように振る舞う事を選んだのだ。
そして、村人たちは武器や農具を持ち――何も知らないセリナの元へと向かった。
……この時、セリナはすでに弱り果てていた。
一年間も人の、それも『負』の感情ばかりを吸収し続けていたのだ。身体に負担が無いわけがなかった。
それでも、大好きな村人のみんなから、吸収し終わった人からもらう感謝の言葉を支えに頑張っていた少女へ、唐突に突き付けられたのは
――愛していた人々からの憎悪。
その時の事を、セリナは今でも鮮明に覚えている。