逆ハーレムに巻き込まれました。
俺様を守るために、セリナが苦しんでいる――その言葉に、心が苦しくなった。
そんな俺様の心境を察したのだろう、リタはふっと雰囲気を和らげると、静かに問いかけてきた。
「……クリュウ君は、セリナちゃんが《龍玉》を壊したって分かった時、セリナちゃんの事を嫌いになった?」
「っ、そんなわけあるか!」
「なら、苦しんでるセリナちゃんを助けたいと思う?」
「無論!!」
勢いよく答えた俺様を見て、リタは静かに頷いた。
そして、俺様の腕を取って立たせると、部屋にあった備え付けのクローゼットの前まで連れてきた。
扉を開ければ、セリナがクエストの時にいつも使っていた『カタナ』が無造作に置かれている。
「……実は、ゲームの中ではこの刀に秘められた力を使って『負』の感情を浄化してたのよね」
「あ?げーむ……って、なんだ?」
「……いや、こっちの話。気にしないで。
とにかく、クリュウ君ちょっとこの刀を握って魔力を通して」
「わかった」
俺様は短く応じると、カタナの柄を握って魔力を纏わせながら持ち上げた。
瞬間、ぶぅん……という低い音と共に、柄にはまった赤い石が輝き始める。
そして、何より驚いたのが……
「な、なんでだ!?周囲の『負』の魔力が浄化されて……!」
「……よかった、これも原作通りみたいね。
それは『破邪の刀』といって、ゲーム設定的にはセリナちゃんとクリュウ君しか装備できない武器なの。
……そしてこれがあれば、『負』の力の影響で暴走しているセリナちゃんを止める事ができる!」
リタはそう言い切ると、俺様の目をまっすぐに見つめた。
そして――深く深く、頭を下げる。