逆ハーレムに巻き込まれました。
温かい場所
■4■
【セリナSide】
「いやぁー、死亡フラグを見事に回避したね!おめでとう!」
明るい日差しの中。
目を覚まして最初に見たのは、こちらを見てニヤニヤと笑う少年の姿だった。
サラサラとした紫色の瞳に、同じ色の大きな瞳。大人しくしていれば随分な美少年なのだが、醜く唇を歪めるその表情は老獪な魔法使いのそれだ。
私はすぐに身体を起こすと、彼へ小さくお辞儀した。
「お久しぶりです、ネリカ様――いえ、学園長」
「いーよいーよ堅苦しい挨拶は。相変わらずセリナちゃんは真面目だなぁ」
そう言って手を振る彼は、ギルドを通して私にガルヴァールへ来るように要請してきた人物だ。冒険者の時は何度か一緒にクエストをこなしている。
……ちなみに、私に『閃光吹雪』なんて二つ名を付けたのも彼だった。
私は顔を上げながら、キョロキョロと周囲を見回す。
そしてすぐに、自分が今いる場所が保健室だと気付いた。
さらに、自分の記憶が《龍玉》を壊したところから無い事や、自分が《龍玉》を壊した理由を思い出し、慌てて質問する。
「あの、学園長!私は助かったんですか!?それとクリュウは無事ですか!?」
「はぁーいはいはい、混乱してるのは分かるけどちょっと落ち着いて?順番に説明するから」
学園長は半ば呆れたようにパンパンと手を叩くと、今回の説明をしてくれた。
「とりあえず、今回の事は君の魔力暴走って事で片付けました。かつてない規模の暴走だったけど、ガンツ先生を含めた8人の生徒が鎮圧に動き、無事に成功。
それと、クリュウ君は――」
そこで不意に、学園長は言葉を途切れさせる。
驚いた私が目を丸くしていると、学園長は窓へ手をかけながら「そのうち分かるさ」と笑った。