逆ハーレムに巻き込まれました。
「……お、遅くなってすみません」
「いや、俺が早く来ただけだ。気にするな」
慌てて謝ると、意外にもリョウ先輩は紳士的な態度で応じてくれた。
……なるほど、この人普段はこんな感じなのか。コンプレックスを刺激されたら豹変するだけで。
勝手に納得しながら周囲を見渡せば、グラウンドを囲むように配置された観客席に生徒がひしめきあっていた。
「す、すごい人ですね……」
「まぁ俺は剣士科1位だし、お前は転校生だしな。興味を引くのも仕方ないだろう」
なんて事ないようにサラリと言ってのけるリョウ先輩。いや、まずこの観客の多さにビビリましょうよ!
っていうか、剣士科1位ってなにそれ!初耳なんですけど!?
そりゃあクラスの子が妙に後ろ向きな応援をしてくれるワケだ!
驚きの事実に緊張していると、ガンツ先生がやってきて距離を取るように言われた。
私とリョウ先輩はその指示に従い、10メートルほど離れる。
一本の大太刀を軽々と構える先輩に対し、私は右手にカタナをぶら下げた状態で左手に本を持つ。
「……全力で来いよ、転校生。俺も本気で行くからな!」
「勿論ですよ先輩。決闘には本気で臨むのが礼儀ですからね」
徐々に強くなるリョウ先輩の殺気を受け流し、私は意識して自然体で立つ。
そして。
「――――では、はじめ!」
ガンツ先生の合図と共に、まとっていた殺気が爆発する。
私は、一直線にこちらへ切り込んでくるリョウ先輩を、同じように切り込む事で迎撃しながら
「冒険者ギルドAランク――『閃光吹雪』、参ります!」
本に描かれた魔法陣に指を滑らせ、黄金の光と共に起動させた。