逆ハーレムに巻き込まれました。




【クリュウSide】



胸の中で泣きじゃくるセリナの背を優しく叩きながら、俺様は小さく嘆息した。



(……だから嫌だったんだ、このクエスト)



今回俺様とセリナがこの学園に転校してきたのは『閃光吹雪』指名の長期クエストが来たからだ。


『ガルヴァール魔法学園の生徒たちの身を守り、学園内の秩序を守る』


その仕事内容を聞いた時、正直俺様はこの仕事を蹴ろうと思っていた。


なぜなら俺と出会う前のセリナが、『死ぬほど人間を憎んでいた』ことを知っているからだ。


だからこそ俺様とセリナは二人で生きてきたし、冒険者ギルドとも最低限の付き合いしかしてこなかった。


それなのに――



『分かりました。そのクエスト、引き受けます』



セリナは頷いた。


その瞳に、強い決意を秘めて。


そしてその後、なぜ了承したのかと問い詰めた俺様に、セリナは笑ってみせたのだ。



『私、もう許したい。……許されたいの』



――かつて、人間を憎んでいた少女は。


やっぱり人間が好きだからね、と言って儚く笑った。


……セリナが何を許したいのか、許してもらいたいのか、詳しい話は俺様も聞いた事がない。


けれどその言葉は、俺様にガルヴァール魔法学園へ行くことを決意させるには十分だった。




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