闇夜に烏雪に鷺
闇夜に烏雪に鷺
良い街と悪い街の違いっていうのは、匂いだと、頭の良い妹が行っていたのを思い出した。
何が引き金になるわけでもなく、急に。
咥えていた煙草を地面に落として、ブーツの底で消す。
匂いか…気にしたこともないな。
暗黒街と新街の間を彷徨く。
新街で煙草をポイ捨てすると罰金らしいが、暗黒街じゃ常識。ああ、もしかしてそういう所かもしれない。
「珍しい」
現れた姿に声をかける。Vネックの黒いTシャツを着た彼は、さして表情を変えずに来た道を戻っていった。
私もその後をついていく。