闇夜に烏雪に鷺

帰ってこない、なんて。

帰る、と表している時点で、私の帰る場所はもうここ以外にない。


「私はこの街に骨を埋める覚悟があります」

「でも、お前はこの街出身じゃない」

「…意地悪」


手を払う。

それを言うのは、意地悪だ。

彼から離れようと起き上がろうとするのを防がれて、手をずるりと引かれる。次は背中を打った。


「俺は後悔してんだよ」


前髪を梳かれる。悲しそうな瞳が、私を射抜く。


「……何に?」

「お前をこっちに引き込んだことも、さっき弟の話をしたことも」


それって、全部だ。



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