もしも私が―。

「きゃく……お客様!」

「え?」

 私の目の前に飛び込んできたその人は、私の知らない顔だった。
 一瞬間を置いて、この人が係員だと分かる。

 どうやら、終点に着いていたらしい。
 するとすぐに、不安と焦りで全身の汗が出た。
 横を見る。

「友未がいない……友未!はやく!早く!機械を止めて!」

 焦りから、大声でそう係りの人に伝えると、私は乗り物を飛び降りて、来た道へと走った!

「友未!友未、いる!?」

 叫びながら走っていると、何台かの乗り物とすれ違った。
 そして、聞きたくない言葉を聞いてしまった。

「さっきの人形すごかったね、超リアル!血がドバァ―ってさ!」

「違う、そんなわけない!そんなの、どこにだってある!きっとまだ、友未は生きてる」

 そう自分に言い聞かせて、中間まで来た所で、私は見てしまった。


「……ゆうみぃ―!!」


 岩場で横たわっている友未が目に飛び込んできた。
 血が流れて、岩を赤く、赤く染めていた。

 私は友未に駆け寄ると、友未を抱き上げて、恐る恐る、震える手で必死に抱きしめながら、心臓の音を聞いた。

「死んでる……」

 私は友未を強く抱きしめると、大声で叫んだ。
 自然と溢れ出す涙と後悔。

「何が……何が大丈夫だよ!助けられなかった……」

「ワアアア―!」

 自分の声が人工の洞窟の中で、どれだけ響いたのか分らないぐらい、大きな声で叫んでいた。

「友未、友未!」


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