もしも私が―。
訪問者
それから数日間、私は夢を見ることが無かった。
でもそれと引き換えに、どんどん身体がだるくなって行くような気がした。
そんなある日の夜、一本の電話がかかって来た。
「はい、もしもし」
「福崗だけど、あなたのお父さん帰って来た?」
「まだだと思いますけど、どうしたんですか?」
「うん、ちょっと聞きたいことがあっただけだから。でも会社早退したって言ってたからもう帰ってると思ったんだけど」
「そうなんですか?」
「ええ、ここのところ」
ザアア!
電波の状況が悪いのか、途中でよく聞き取れなくなった。
「え?何ですか?聞こえない」
その時、急に目がクラクラして視界に映る物が、グニャグニャと曲がっていった。
「眠い……」
福崗さんの声を聞きながら、強烈な眠気に襲われて意識が遠くなるのを、感じた。
「暗い。またあの夢」
また真っ暗な空虚な闇の中に、一人、私はポツンとたたずんでいた。
白い光への入り口がまた遠くなっていた。
「今度は、助けるから。友未、見ててね!」
そう胸に誓いを立て、光の入り口へと入っていった。
目を開けると、そこの風景には見覚えがあった。
そこは、あの廃工場だった。
その工場の入り口にいたのは、私の知っている者達だった。
「松谷さん!福崗さん!矢城さん!」
三人は廃工場から出るところのようだった。
(まだ生きてる!早く起きて知らせなきゃ!)