もしも私が―。

そう思った瞬間、彼らの後ろから、あの醜い化物が姿を現した。

「危ない!」

 思わず駆け出す。

「きゃあ!」

「福崗さん!」

 福崗さんの背中から血しぶきが上がり、倒れ込んだ。
 それを見た二人が、驚いて振り向いたと同時に、夜城さんの喉が抉られた。

「くそ!」

 松谷さんが恐れ戦きながら、腰から拳銃を取り出そうとするけど、それよりも早く、化物が松谷さんの顔を噛み切った。

「きゃあ!」

 倒れ込んだ松谷さんを見て、思わず小さく悲鳴が上がる。
 気絶しそうになる精神をぐっと堪えたのと同時に、怒りが湧いてきた。

「許せない!」

 怒りに身を任せて、私は化物に向かって体当たりした。

「え?」

 体がすり抜ける。反動で転んで、目に付いた近くにあった石を化物に投げつけた。
 その石は化物の体に当たって、跳ね返った。ズキンと、一瞬私の体が痛んだ気がした。

(何で?私は石だって掴めるのに、どうして化物には触れないの?)

 ズキュウーン!

 突然あたりに、激しい音が響きわたった。

「え?」

「ヴォォオォオ――」

 化物が雄叫びを上げる。見ると、福崗さんがうつ伏せのまま、拳銃を構えて化物を睨みつけていた。



    *********


 
 瞬きをして目を開けると、見慣れた天井があった。

「福崗さんは!?」

 時計を見ると、闇に呑まれてから二十分近く経っていた。

「あの場所に行かなきゃ!まだ無事かもしれない!」

 私は急いで上着を羽織ると、転がるようにして階段を下り、靴も履かずに飛び出した。
 
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