もしも私が―。
そう思った瞬間、彼らの後ろから、あの醜い化物が姿を現した。
「危ない!」
思わず駆け出す。
「きゃあ!」
「福崗さん!」
福崗さんの背中から血しぶきが上がり、倒れ込んだ。
それを見た二人が、驚いて振り向いたと同時に、夜城さんの喉が抉られた。
「くそ!」
松谷さんが恐れ戦きながら、腰から拳銃を取り出そうとするけど、それよりも早く、化物が松谷さんの顔を噛み切った。
「きゃあ!」
倒れ込んだ松谷さんを見て、思わず小さく悲鳴が上がる。
気絶しそうになる精神をぐっと堪えたのと同時に、怒りが湧いてきた。
「許せない!」
怒りに身を任せて、私は化物に向かって体当たりした。
「え?」
体がすり抜ける。反動で転んで、目に付いた近くにあった石を化物に投げつけた。
その石は化物の体に当たって、跳ね返った。ズキンと、一瞬私の体が痛んだ気がした。
(何で?私は石だって掴めるのに、どうして化物には触れないの?)
ズキュウーン!
突然あたりに、激しい音が響きわたった。
「え?」
「ヴォォオォオ――」
化物が雄叫びを上げる。見ると、福崗さんがうつ伏せのまま、拳銃を構えて化物を睨みつけていた。
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瞬きをして目を開けると、見慣れた天井があった。
「福崗さんは!?」
時計を見ると、闇に呑まれてから二十分近く経っていた。
「あの場所に行かなきゃ!まだ無事かもしれない!」
私は急いで上着を羽織ると、転がるようにして階段を下り、靴も履かずに飛び出した。