もしも私が―。
あの廃工場の前には数人の人だかりが出来ていた。
私は肝を冷やしながらその中に入った。
「ちょっと、すいません!」
すると見えたなのは、傷口を女の人に抑えられて、倒れている福崗さんだった。
「福崗さん!」
私は福崗さんに駆け寄って、手当てをしている女の人に聞いた。
「救急車は!?」
「大丈夫です、もう呼びました。もう少しで繰ると思います。傷口は思ったより深くないので、止血さえちゃんとすれば、助かると思います」
「あなたは?」
「私看護士をしてるんです」
「そうなんですか……」
私はひとまずほっとして、松谷さんと夜城さんを探した。
彼らは、布をかけられたいた。
(ああ、やっぱり、ダメだったんだ……)
そう思った時、福崗さんの口がかすかに動いた。
「圭子ちゃん……」
「福崗さん?福崗さん!」
私が側に駆け寄ると同時に救急車がサイレンを鳴らしながら到着した。
レスキュー隊員が降りてきて、福崗さんをタンカに乗せる。
そんな中、福崗さんは私の顔を見て、途切れ途切れにおかしそうに言った。
「化物……本当に、いた、のね」
「福崗さん、喋っちゃダメです!」
「圭子ちゃん、工場の二階に……ある、わ」
「え?」
それ以上聞き返すことは出来なかった。福崗さんが再び、気を失ったからだ。
「あなたこの女性の知り合いですね。乗りますか?」
レスキュー隊員の言葉に私は首を振った。
警察が来る前に、福崗さんが言ったことを確かめないと……。
私は、救急車を見送った後工場の中に駆け込んだ。
真っ先に二階のあの部屋を目指す。
階段を上り、あの部屋へ息を切らして駆け込むと、辺りを見回した。
「福崗さんが伝えたかったこと……なんだろう?」