もしも私が―。

 確か、この辺にヤクザみたいな人達がいて、ここに、白衣の人……徐々に思い出して行く。
 ああ、ここが、あのお兄さんが座らされていた場所だ。椅子はなくなっているけど確かにそうだ。

「ん?」

 ふと、足の下のシミに気がついた。

「何これ……!」

 そのシミは不気味なほどくっきりと、赤黒く床にへばりつくようにして残っていた。
 そして何より不気味だったのは、そのシミの形が、人の形のように見えたからだ。
 私は気持ちが悪くなり、すぐに工場を出た。

「何だったのあれ?」

 するとすぐに、警察が来て、立ち入り禁止にされ、松谷さんと夜城さんを連れて行った。
 私はそれを見届けた後、家路についた。

「福崗さん、助かったかな?明日、病院聞いて行ってみよう」

 そんな事を考えながら歩いていた時、後ろから、名を呼ばれて振り向いた。

「立花圭子さん!」

「え?」

 そこにいたのは、サングラスに黒いスーツ姿の若い男の人だった。しかも、三人もいた。

「立花圭子さんですね?」

「そうですけど?」

(何か怪しい人達……関わらない方が良いかも)

 そう思った時、髪の長い人が思いもよらない言葉を言い放った。

「少々、化物のことで問題が起きまして」

「化物!?」

(こいつなんで化物の事知ってるの!?っていうか……化物って、私の夢でだけのデフォルメじゃないの?……そういえば、福崗さんも化物が本当にいたって……)

「あの……」

「立花圭子さん、我々と来ていただけますか?」

「え?」

「今、世間を騒がせている化物を処分しなくてはいけないので」

「……だからって、何で私が?」

「あなたが必要だからです」

「え?」
< 29 / 36 >

この作品をシェア

pagetop