もしも私が―。
淡々と、顔色一つ変えずに話すこの男に、私は何故だか恐怖を覚えた。
「一緒に来て頂けますね?」
私は、躊躇って、その後逃げた。
(冗談じゃないっての!いきなり現れてそんなこと言われたって……!)
家に駆け込んで、玄関のドアを閉めた。
(あれ?……いつもならこんなに騒がしくしたらお父さん怒るのに……)
私は上がった息を整えながら、リビングを覗いた。
(家の明かりは点いてなかったし……まだ帰ってないのかな?)
そんなことを考えていると、いるはずのない部屋から、声をかけられた。
「遅いお帰りですね」
顔を上げるとそこにいたのは、紛れもなくさっきの変な連中だった。
「な、何で?」
「先回りさせていただきました。玄関のドアが開いていましたよ。無用心ですね」
「家宅侵入したやつに言われたくないんですけど!」
呆れた物言いだったので、こんな何だか分からない怖い人に、つい、突っ込んでしまった。
「お父様なら、キッチンですよ」
「え?」
唐突な言葉に驚きを隠せないでいると、彼は同じ言葉を続けた。
「お父様はキッチンです」
私は焦燥に駆られた。
嫌な予感が私を支配した。急いで地続きのキッチンへと駆ける。
「お父さん!?」
流し台の陰に隠れるように横たわっていた。
「お父さん!?うそでしょ?ねえ!」
お父さんの体をゆすりながら、ふと、ヌルっとした感覚に気がついた。
「血!?背中から!……何で!?……爪、あと?」
「いましたか?」
男の冷淡な声に、私は我を忘れて叫んだ。
「あんた達!……あんた達が父を殺したのね!?」
「何をおっしゃっているのですか?」
「ふざけないでよ!」
「おいおい、ふざけないで欲しいのはこっちだぜ。嬢ちゃん」