もしも私が―。

 頬に触れてみる。確かに皮が少し切れたような傷があった。

(何で、気づかなかったの?)

「その傷は、先ほど女性警察官が撃ったものです」

 私の思考が止まった。なんて言った?そんなはずないでしょ?そんなはずない!頭ではそう思っているのに、なんでだろう?さっきから、すぐ後ろに闇が……私の後ろで闇が牙をむいているのが解るから……。
 やめてよ。すぐにその口を閉じて!

「思い出していただけましたか? つまりあなたが化――」

「やめてえ!」

 私は幟呉の言葉を途中で遮り、無我夢中で駆け出した。階段を猛スピードで上がり、自分の部屋へ駆け込む。

「嘘よ!全部嘘!」

 でも、途切れ途切れに声が聞こえる。

「ばけ の」

「違う!私じゃない!」

「化物!」

 突然、耳鳴りが鳴り響いた。



 ―――――キイイイイィ―――――



 それと同時に頭に割れるような鈍痛が響いて、体中の毛穴が開いて、鼓動が唸った気がした。

『ここは……どこ?』                          

 いつもと同じ暗闇の中、光が見える。でもいつもと違うのは、電波の悪いテレビを見てるみたいに時々、ジリッジリッと視界が乱れた。そのまま、私は吸い込まれるようにして、光の中へ入って行った。

『まぶしい』

 目が眩むほどの光、でも何故か暖かい。背筋が凍るほど、あんなにこの光は冷たかったはずなのに……。
 そんなことを思っているうちに、私は光のトンネルを抜けた。

 私は、ひどくイヤな場所に立っていた。全ての始まりの場所。あの、廃工場の中だった。
 すると、あの部屋の前で、セーラー服を着た少女が部屋の中を窺っていた。
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